強度行動障害のお子さまへの関わり方とは?家庭や支援現場でできる対応方法【第2回】

白ゆりグループ

前回の記事では、強度行動障害とはどのような状態なのか、そして行動の背景には不安や困りごとが隠れていることについてお伝えしました。

強度行動障害として見られる行動は、決して本人のわがままや反抗ではなく、「助けてほしい」「不安だ」「困っている」というサインである場合が少なくありません。

しかし、実際にパニックや自傷行為、他害行為などが起こると、保護者様や支援者の方は「どう対応すればよいのだろう」と戸惑ってしまうこともあるでしょう。

良かれと思って声をかけたことが逆効果になったり、対応に悩んでしまったりすることも珍しくありません。

そこで今回は、強度行動障害のあるお子さまへの関わり方や、家庭や支援現場で実践できる対応方法についてご紹介します。

まず大切なのは「行動の理由」を考えること

強度行動障害への対応で最も大切なのは、目の前で起きている行動だけを見て判断しないことです。

私たちは、誰でも不安なことや困ったことがあれば、その理由を言葉で伝えることができます。しかし、発達特性やコミュニケーションの難しさがあるお子さまの場合、自分の気持ちをうまく言葉にできないことがあります。

その結果として、不安や困りごとが「行動」という形で表れることがあります。

例えば、

  • 急に大声を出した
  • 物を投げた
  • パニックになった
  • 自分の頭を叩いた
  • 周囲の人を押してしまった

という行動があった場合、ついその行動を止めることに意識が向いてしまいます。

もちろん、安全を確保することは大切です。しかし、行動だけを抑えようとしても、根本的な解決にはつながりません。

そこで大切になるのが、

「なぜその行動が起きたのだろう?」

という視点です。

例えば、

予定変更による不安

発達障がいのあるお子さまの中には、見通しを持つことで安心できるお子さまが多くいます。

そのため、

「今日は公園へ行く予定だったのに雨で中止になった」
「いつもの先生がお休みだった」

といった変化が、大人が想像する以上に大きなストレスになることがあります。

不安や混乱が強くなることで、パニックや大声につながる場合があります。

感覚過敏によるストレス

周囲の人には気にならない刺激でも、お子さまにとっては耐え難い苦痛になっていることがあります。

例えば、

  • 教室のざわざわした音
  • 掃除機やチャイムの音
  • 蛍光灯の明るさ
  • 人との距離の近さ

などです。

本人は「うるさい」「まぶしい」とうまく伝えられず、その苦痛が行動として表れることがあります。

活動内容が難しすぎた

課題や活動が本人の理解度や発達段階に合っていない場合もあります。

「やりたいけれどできない」
「どうしたらいいかわからない」

という状況は、お子さまにとって大きなストレスになります。

その結果、

  • 活動から離れる
  • 物を投げる
  • パニックになる

といった行動につながることがあります。

気持ちを伝えられなかった

本当は、

  • 疲れた
  • 休みたい
  • 手伝ってほしい
  • 嫌だった

という気持ちがあっても、それを適切に伝えることが難しい場合があります。

すると、その気持ちが行動として表現されることがあります。

つまり、強度行動障害として見られる行動は、「困らせようとしている行動」ではなく、「困っていることを伝えるためのサイン」である場合が少なくありません。

だからこそ、支援者や保護者が行動の背景を理解しようとする姿勢がとても重要になります。

行動が起きたときには、

  • その前に何があったのか
  • どんな環境だったのか
  • 本人は何に困っていたのか
  • どんな気持ちだったのか

を振り返ることで、原因が見えてくることがあります。

原因を理解することで、

  • 環境を調整する
  • 見通しを持てるようにする
  • 伝える方法を増やす
  • 活動内容を工夫する

といった具体的な支援につなげることができます。

強度行動障害への支援は、「行動をなくすこと」が目的ではありません。

お子さまが安心して過ごせる環境を整え、自分の気持ちを伝えられる方法を増やしていくことが、結果として行動の安定につながっていくのです。

パニックになったときの対応

強度行動障害のあるお子さまがパニック状態になると、保護者様や支援者の方も慌ててしまうことがあります。しかし、まず大切なのは「すぐに行動を止めようとしないこと」です。

パニックは、お子さま自身が不安や混乱、強いストレスによって気持ちをコントロールできなくなっている状態です。そのため、大人の指示や説明が十分に伝わりにくくなっています。

「どうしてそんなことをするの?」「落ち着いて!」と声をかけても、かえって混乱が大きくなってしまう場合があります。

まずは、お子さまが安心して落ち着ける環境を整えることを優先しましょう。

まずは安全を確保する

お子さまがパニック状態になったときは、無理に落ち着かせようとするよりも、まず安全を確保することが大切です。

周囲に危険な物があれば離し、お子さま自身や周囲の人がけがをしない環境を整えます。

例えば、

  • 投げると危険な物を片付ける
  • 周囲のお子さまとの距離を確保する
  • 必要に応じて静かな場所へ移動する
  • 転倒や衝突の危険がない環境を整える

といった対応が考えられます。

また、無理に身体を押さえたり、力で制止したりすることは、お子さまの不安や恐怖心を強めてしまう場合があります。安全確保が必要な場面を除き、できるだけ落ち着いて見守る姿勢も大切です。

パニック時には、お子さま自身も「どうしてよいかわからない」「苦しい」という状態になっています。そのため、まずは安心できる環境を整え、「大丈夫だよ」「ここは安全だよ」というメッセージを伝えることが重要です。

パニックが落ち着いた後に、「何が嫌だったのかな」「どうしたらよかったかな」と一緒に振り返ることで、次回の予防や支援につなげることができます。

大人が落ち着いて対応する

お子さまが興奮しているときに、

「落ち着いて!」
「どうしてそんなことをするの!」
「やめなさい!」

と強い口調で伝えてしまうことはありませんか。

しかし、パニックや興奮状態にあるお子さまは、自分自身でも気持ちをコントロールすることが難しくなっています。そのような状態のときに大人が感情的になったり、大きな声で注意したりすると、お子さまはさらに不安や緊張を感じてしまうことがあります。

また、お子さまは周囲の大人の表情や声のトーンにとても敏感です。大人が焦った様子を見せると、「何か大変なことが起きている」と感じ、興奮が強まってしまう場合もあります。

そのため、まずは支援する大人自身が深呼吸をし、落ち着いた気持ちで対応することが大切です。

例えば、

  • 短くわかりやすい言葉で伝える
  • 穏やかな声の大きさを意識する
  • 必要以上に話しかけない
  • 安心できる場所へ誘導する
  • 落ち着くまで見守る

といった対応が有効な場合があります。

特にパニックの最中は、多くの言葉をかけても内容が伝わりにくいことがあります。そのため、「大丈夫だよ」「ここで待とうね」など、安心感を与える短い言葉を選ぶことがポイントです。

大人が落ち着いて対応することで、お子さまも少しずつ安心感を取り戻しやすくなります。

大人の安心感は、お子さまの安心感にもつながります。まずは「落ち着かせよう」とするのではなく、「安心できる環境をつくろう」という視点を持つことが大切です。

話をするタイミングを見極める

パニック中のお子さまは、不安や混乱、怒りなどの感情が大きく高まっている状態です。そのため、大人がどれだけ丁寧に説明をしても、言葉の内容を十分に理解したり受け止めたりすることが難しくなっています。

このような場面で、

  • 「どうしてそんなことをしたの?」
  • 「落ち着いて話を聞いて」
  • 「それはダメでしょう」

といった声かけをしてしまうと、お子さまはさらに追い詰められた気持ちになり、興奮が強まってしまうことがあります。

まずは無理に話をしようとせず、お子さまが安心して落ち着ける環境を整えることを優先しましょう。静かな場所へ移動したり、信頼できる大人がそばで見守ったりすることで、少しずつ気持ちが落ち着いていく場合があります。

そして、十分に落ち着いた後に振り返りの時間を設けることが大切です。

例えば、

  • 「何か嫌なことがあったかな?」
  • 「困ったことがあったら教えてね」
  • 「次はどうしたらよさそうかな?」

など、お子さまを責めるのではなく、一緒に考える姿勢で関わることが重要です。

また、言葉で気持ちを伝えることが難しいお子さまの場合は、絵カードや表情カード、写真などを活用しながら気持ちを確認する方法も有効です。

パニックそのものを叱るのではなく、「何がきっかけだったのか」「どのような支援があれば安心できたのか」を振り返ることで、次回の予防や環境調整につなげることができます。

お子さまが安心して気持ちを表現できる関係づくりこそが、長期的な支援において非常に大切なポイントとなります。

見通しを持てる環境をつくる

強度行動障害の背景には、「先がわからない不安」が関係していることがあります。

私たちにとっては何気ない予定変更や活動の切り替えでも、お子さまによっては大きなストレスとなる場合があります。

例えば、

「次は何をするのだろう」
「いつ終わるのだろう」
「予定が変わったらどうしよう」

といった不安を抱えながら過ごしているお子さまも少なくありません。

特に自閉スペクトラム症(ASD)の特性があるお子さまは、予測できない出来事や急な変化に強い不安を感じることがあります。その不安が積み重なることで、パニックや大声、自傷行為などの行動として表れることもあります。

そこで有効なのが、見通しを持てる環境づくりです。

見通しを持てる環境とは、「これから何が起こるのか」「いつ終わるのか」「次に何をするのか」がわかりやすく示されている環境のことです。

例えば、

  • スケジュール表を活用する
  • 写真やイラストで活動内容を示す
  • 活動の終わりを事前に伝える
  • 予定変更がある場合は早めに知らせる
  • タイマーを使って残り時間を伝える
  • 活動の流れを順番に掲示する
  • 終わった活動を一緒に確認する
  • 終わった活動を一緒に確認する

といった工夫があります。

例えば、「勉強のあとに運動をする」「運動が終わったらおやつの時間」といった流れが事前にわかっているだけでも、お子さまは安心して活動に参加しやすくなります。

また、予定変更が必要な場合には、できるだけ早い段階で伝えることも大切です。

急な変更は混乱につながりやすいため、

「今日は雨だから公園には行けないけれど、その代わりに室内でボール遊びをしようね」

というように、変更後の予定もあわせて伝えることで安心感につながります。

さらに、言葉だけで説明するよりも、写真やイラスト、絵カードなど視覚的な情報を活用することで理解しやすくなるお子さまも多くいます。

実際に支援現場では、視覚支援を取り入れることで活動への参加がスムーズになったり、パニックが減少したりするケースも少なくありません。

「次に何をするのか」がわかるだけでも、不安が軽減されるお子さまは多くいます。

見通しを持てる環境づくりは特別なことではなく、お子さまが安心して過ごすための大切な支援の一つなのです。

「できた」を積み重ねることが大切

強度行動障害のあるお子さまへの支援では、どうしても「できていないこと」や「困っている行動」に目が向きがちです。

しかし、お子さま自身も毎日たくさんの不安や困難と向き合いながら過ごしています。そのため、支援の中では課題ばかりに注目するのではなく、「できたこと」や「頑張れたこと」を見つけて認めることがとても大切です。

例えば、

  • 5分間座って活動できた
  • 気持ちを切り替えられた
  • 自分から助けを求められた
  • 落ち着いて過ごせる時間が増えた
  • 苦手な活動に挑戦できた
  • 友だちと同じ空間で過ごせた
  • スタッフの声かけに応じることができた

こうした変化は、大人から見ると小さな一歩に感じるかもしれません。しかし、お子さまにとっては大きな成長であり、自信につながる大切な経験です。

また、「できた」という経験を積み重ねることで、「自分にもできるかもしれない」という前向きな気持ちが育まれていきます。この自己肯定感は、新しいことに挑戦する意欲や、困ったときに周囲へ助けを求める力にもつながっていきます。

反対に、失敗や注意ばかりが続くと、「どうせできない」「また怒られるかもしれない」という不安が強くなり、さらに行動が不安定になってしまうこともあります。

だからこそ、私たちは結果だけではなく、その過程や努力にも目を向けることを大切にしています。

「最後までできなかったけれど、途中までは頑張れた」
「パニックになったけれど、以前より早く気持ちを切り替えられた」

このような小さな成長を見逃さず、お子さまと一緒に喜ぶことが、次の成功体験につながります。

成功体験が増えることで、不安の軽減や行動の安定につながるだけでなく、お子さま自身が安心して過ごせる時間も少しずつ増えていきます。そして、その積み重ねが将来の自立や社会参加への大きな力になっていくのです。

一人ひとりに合った方法を見つける

強度行動障害への対応に「これが正解」という方法はありません。

同じような行動が見られても、

  • 好きなこと
  • 苦手なこと
  • 不安を感じる場面
  • 落ち着ける方法

は一人ひとり異なります。

例えば、予定変更が苦手なお子さまの場合は、事前にスケジュールを伝えたり、視覚的な支援を活用したりすることで安心して過ごせることがあります。

一方で、人の多い場所や大きな音が苦手なお子さまの場合は、静かな環境を確保したり、休憩できるスペースを用意したりすることで落ち着いて活動に参加できることがあります。

また、自分の気持ちを言葉で伝えることが難しいお子さまには、絵カードや写真、ジェスチャーなどを活用することで、気持ちを表現しやすくなる場合もあります。

大切なのは、「なぜその行動が起きたのか」を丁寧に観察し、その子にとって何が安心につながるのかを見つけていくことです。

そのためには、

  • どのような場面で行動が起きやすいのか
  • 行動の前にどのような出来事があったのか
  • どのような対応をすると落ち着きやすいのか
  • 好きな活動や得意なことは何か

といった視点で日々の様子を記録し、振り返ることも有効です。

強度行動障害のあるお子さまへの支援は、行動を抑えることが目的ではありません。お子さま自身が安心して過ごし、自分らしく生活できる環境を整えることが大切です。

そのため、お子さまの様子を丁寧に観察しながら、その子に合った関わり方や支援方法を見つけていくことが重要になります。

小さな変化や成長を見逃さず、一人ひとりの特性に寄り添った支援を積み重ねることが、お子さまの安心や自信につながっていくのです。

家庭と支援機関の連携が重要です

強度行動障害への支援は、家庭だけで抱え込むものではありません。

保護者様が日々向き合う中で、「どう対応すればよいかわからない」「自分の対応が合っているのだろうか」と不安を感じることもあるでしょう。しかし、お子さまへの支援はご家庭だけで行うものではなく、学校や放課後等デイサービス、相談支援専門員、医療機関など、さまざまな支援機関と協力しながら進めていくことが大切です。

お子さまは環境によって見せる姿が異なります。

例えば、

  • 家では落ち着いているが学校では不安が強い
  • 学校では頑張れているが家では疲れが出やすい
  • 放課後等デイサービスでは活動に参加できるが集団生活が苦手

といったように、それぞれの場所で異なる課題や強みが見られることがあります。

そのため、ご家庭だけでは気づけないことや、支援現場だからこそ見えてくることも少なくありません。

ご家庭での様子と支援現場での様子を共有することで、

  • 行動のきっかけ
  • 効果的だった対応
  • 苦手な場面
  • 落ち着ける方法
  • 成功しやすい環境

などが見えてくることがあります。

例えば、「予定変更がある日にパニックが起きやすい」という情報が共有できれば、学校や事業所でも事前に見通しを伝える工夫ができます。また、「この声かけをすると落ち着きやすい」「この活動の後は疲れやすい」といった情報も、支援の質を高める大切なヒントになります。

さらに、家庭と支援機関が同じ対応方法を意識することで、お子さま自身も安心しやすくなります。

家庭ではこう言われるけれど、学校では違う対応をされるという状況が続くと、お子さまは混乱してしまうことがあります。一方で、どの場所でも同じような支援や声かけが行われることで、「こうすれば大丈夫」という安心感につながり、行動の安定にも結びつきやすくなります。

強度行動障害の支援は、一人の大人が頑張るものではありません。

保護者様、学校、放課後等デイサービス、地域の支援機関がチームとなり、お子さまを中心に情報を共有しながら支援していくことが大切です。

お子さまの成長を支えるためには、周囲の大人が同じ方向を向き、それぞれの立場からできる支援を積み重ねていくことが何より重要なのです。

次回は「放課後等デイサービスでできる支援」についてご紹介します

今回は、強度行動障害のあるお子さまへの関わり方や対応方法についてご紹介しました。

大切なのは、行動だけを見るのではなく、その背景にある困りごとや不安に目を向けることです。

次回はいよいよシリーズ最終回として、放課後等デイサービスで行っている具体的な支援や、運動療育型児童デイぽぷらの樹東住吉で大切にしている支援についてご紹介します。

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