強度行動障害とは?行動の背景を理解することが支援の第一歩
「突然大きな声を出してしまう」「気持ちが高ぶると自分や周囲を傷つけてしまうことがある」「思い通りにならないと激しくパニックになってしまう」。
このような行動が繰り返し見られると、保護者様は「どう対応すればいいのだろう」「このまま成長していけるのだろうか」と不安を感じることも多いのではないでしょうか。

また、外出先や学校、地域の中で周囲の理解を得られず、「しつけが足りないのではないか」「甘やかしているのではないか」といった心ない言葉を受けてしまうこともあります。そのような経験から、ご家族が孤立感や疲労感を抱えてしまうケースも少なくありません。
しかし、強度行動障害として見られる行動の多くは、決して本人のわがままや反抗心によるものではありません。
例えば、自分の気持ちを言葉でうまく伝えられない、予定の変更に強い不安を感じる、周囲の音や光などの刺激が苦痛に感じられるなど、さまざまな要因が重なり合って行動として表れている場合があります。
私たちが普段何気なく行っている「助けてほしい」「嫌だ」「不安だ」「わからない」といった意思表示も、お子さまによっては言葉で伝えることが難しいことがあります。その結果として、大声を出したり、物を投げたり、自分を傷つけたりする行動につながってしまうことがあるのです。

つまり、その行動は「困らせるための行動」ではなく、「困っていることを伝えるためのサイン」であるとも考えられます。
強度行動障害について正しく理解することは、お子さまへの適切な支援につながるだけでなく、ご家族の負担軽減や周囲の理解促進にもつながります。
近年では、行動そのものを抑え込むのではなく、「なぜその行動が起きているのか」という背景に目を向ける支援の重要性が広く知られるようになってきました。行動の理由を理解し、環境を整えたり、適切なコミュニケーション方法を見つけたりすることで、お子さまが安心して過ごせる場面を増やすことができます。
運動療育型児童デイぽぷらの樹東住吉でも、一人ひとりの特性や発達段階に寄り添いながら、「問題行動を見る」のではなく、「行動の背景を理解する」ことを大切にしています。

今回は、強度行動障害とはどのような状態なのか、なぜそのような行動が起こるのか、そして支援を考えるうえで大切な視点について詳しくご紹介していきます。
強度行動障害とは?
強度行動障害とは、障がいの特性や環境とのミスマッチなどが要因となり、自分自身や周囲の人の安全、日常生活に大きな影響を及ぼす行動が高い頻度で見られ、継続的かつ専門的な支援が必要な状態を指します。
「障害名」ではなく、あくまでも行動面において特別な配慮や支援が必要な状態を表す言葉です。
厚生労働省では、自傷や他害、著しいこだわり、睡眠の乱れなどによって本人や周囲の生活に大きな支障が生じている状態を強度行動障害として位置づけています。
具体的には、
- 頭や顔を叩く、噛むなどの自傷行為
- 人を叩く、蹴る、噛むなどの他害行為
- 激しいパニックや興奮状態
- 長時間にわたって大声を出し続ける
- 家具や壁、玩具などを壊してしまう
- 睡眠リズムが大きく乱れる
- 特定の順番やルールへの強いこだわり
- 道路への飛び出しなどの危険行動
- 衣服を脱ぎ続けるなどの社会生活上の困難な行動
などが挙げられます。

これらの行動だけを見ると、「問題行動」と捉えられてしまうことがあります。しかし、実際には本人が困っていることや苦しさを表現している場合が少なくありません。
例えば、言葉で気持ちを伝えることが難しいお子さまが、不安やストレスを感じた際にパニックという形で表現することがあります。また、感覚過敏によって周囲の音や光が苦痛となり、その苦しさから自傷行為や他害行為につながるケースもあります。
つまり、行動そのものが問題なのではなく、「なぜその行動が起きているのか」という背景を理解することが非常に重要なのです。
特に自閉スペクトラム症(ASD)や知的障がいのある方に見られることがありますが、障がいがあるから必ず強度行動障害になるわけではありません。また、適切な支援や環境調整によって行動が落ち着き、生活しやすくなるケースも多くあります。
そのため、強度行動障害を理解するうえで大切なのは、「行動をなくすこと」だけを目標にするのではなく、「本人が安心して過ごせる環境を整えること」「困りごとの原因を探ること」という視点を持つことです。

なぜ強い行動として表れるのでしょうか?
強度行動障害のあるお子さまの行動を見ると、「なぜこんな行動をするのだろう」と感じることがあるかもしれません。
しかし、その行動の多くは本人なりの理由があり、決して周囲を困らせようとしているわけではありません。
私たちが頭痛や腹痛を言葉で伝えるように、お子さまたちも不安や苦痛、困りごとを伝えようとしています。ただ、その伝え方が言葉ではなく行動として表れている場合があるのです。
ここでは、強い行動が現れる主な背景についてご紹介します。
言葉で伝えることが難しい
私たちは困ったことや嫌なことがあれば、言葉で伝えることができます。
しかし、言葉による表現が苦手なお子さまの場合、
- 「不安」
- 「怖い」
- 「嫌だ」
- 「助けてほしい」
- 「どうしたらいいかわからない」
という気持ちを十分に伝えられないことがあります。

例えば、活動内容が理解できなかったり、周囲の状況についていけなかったりしても、それを適切に伝えることが難しい場合があります。
その結果として、
- 大声を出す
- 泣き続ける
- 物を投げる
- 自分の頭を叩く
- 周囲の人を押してしまう
といった行動として表現されることがあります。
一見すると問題行動に見えるかもしれませんが、本人にとっては「困っていることを伝えるための手段」になっている場合も少なくありません。
見通しが持てない不安
発達障がいのあるお子さまの中には、予定変更や予測できない出来事に強い不安を感じるお子さまがいます。
私たちは日常生活の中で多少の予定変更があっても柔軟に対応できますが、お子さまによっては「予定通りであること」が安心につながっている場合があります。
例えば、
「今日は公園へ行く予定だったのに雨で中止になった」
「いつも座っている席に別のお友だちが座っていた」
「急に先生が変わった」
といった出来事でも、大人が想像する以上に大きな混乱や不安を感じることがあります。

また、「次に何をするのか」「いつ終わるのか」がわからない状況も不安につながります。
その不安が積み重なることで、
- パニックになる
- その場から逃げ出そうとする
- 大声を出す
- 活動への参加を拒否する
といった行動につながることがあります。
そのため、支援の現場ではスケジュールを視覚的に示したり、事前に変更を伝えたりする工夫が重要になります。

感覚の特性による負担
強度行動障害の背景には、感覚の特性が関係していることもあります。
私たちには気にならない音や光、人の声が、お子さまにとっては非常につらい刺激になっている場合があります。
例えば、
- 教室のざわざわした音
- 蛍光灯の明るさ
- エアコンの音
- 人との距離感
- 洋服のタグの感触
- 特定のにおい
などが大きなストレスになることがあります。

感覚過敏のあるお子さまの場合、周囲からは何事もないように見えても、本人は常に強い刺激にさらされている状態かもしれません。
逆に、感覚を感じにくい「感覚鈍麻」がある場合には、強い刺激を求めて飛び跳ねたり、物を強く叩いたりする行動が見られることもあります。
こうした感覚の特性は目に見えにくいため理解されにくいのですが、お子さまにとっては日常生活に大きな影響を与える要因の一つです。
成功体験の少なさや失敗経験の積み重ね
もう一つ見逃せないのが、これまでの経験です。
周囲から何度も注意されたり、失敗を繰り返したりすると、「どうせできない」「また怒られる」という気持ちが強くなることがあります。

その結果、
- 活動を拒否する
- すぐに怒る
- 自分を傷つける
- 周囲との関わりを避ける
といった行動につながる場合があります。
私たちはつい行動だけに目を向けてしまいがちですが、その背景には傷ついた経験や自信のなさが隠れていることもあります。
だからこそ、小さな成功体験を積み重ね、「できた」「認めてもらえた」という経験を増やしていくことが大切なのです。

行動は「困りごとのサイン」
強度行動障害のあるお子さまの行動は、本人からのメッセージであることが少なくありません。
「わかってほしい」
「助けてほしい」
「不安だ」
「つらい」
そんな気持ちが行動として表れている場合があります。
そのため、支援においては行動を抑えることだけを目的にするのではなく、「なぜその行動が起きているのか」を丁寧に考えることが重要です。
行動の背景を理解することが、お子さまにとって安心できる環境づくりや適切な支援につながる第一歩となります。
強度行動障害という言葉だけを聞くと、「問題行動」という印象を持たれることがあります。
しかし、私たちはその行動を単なる問題として捉えていません。
なぜなら、どのような行動にも必ず理由や背景があるからです。
支援の第一歩は環境を整えること
強度行動障害への支援では、お子さま自身を変えようとするのではなく、まず環境を整えることが大切です。
実際に、行動の背景には環境とのミスマッチが関係していることが少なくありません。
例えば、
- 次に何をするかわからない
- 周囲の音が大きすぎる
- 人との距離が近すぎる
- 活動内容が難しすぎる
- 急な予定変更がある
といった状況は、お子さまにとって大きなストレスになる場合があります。
私たちが当たり前に感じている環境でも、お子さまにとっては不安や混乱の原因になっていることがあるのです。
そのため支援では、
- 活動の流れをわかりやすく伝える
- 視覚的なスケジュールを活用する
- 安心できる場所を用意する
- 刺激を減らした環境を整える
- 成功体験を積み重ねる
- 予測できる生活リズムを作る
といった工夫を行います。

例えば、「あと何分で活動が終わるのか」「次は何をするのか」がわかるだけでも、不安が軽減されるお子さまは少なくありません。
また、落ち着けるスペースを確保することで、自分で気持ちを整える力を育むことにもつながります。
環境を整えることは、単に行動を減らすためではありません。
お子さまが安心して過ごし、自分らしく活動できる環境をつくることが目的です。
安心できる環境は、落ち着いた行動や新しい挑戦への意欲につながる大切な土台となります。
一人ひとりに合わせた支援が大切です
強度行動障害の現れ方は、お子さまによって大きく異なります。
同じ診断名であっても、
- 苦手なこと
- 得意なこと
- 不安を感じる場面
- 落ち着ける方法
- 好きな活動
- コミュニケーションの取り方
は一人ひとり違います。
例えば、静かな場所で落ち着けるお子さまもいれば、身体を動かすことで気持ちを切り替えられるお子さまもいます。
また、言葉で説明されるよりも、写真やイラストなど視覚的な情報の方が理解しやすいお子さまもいます。
そのため、「この方法なら誰にでも効果がある」という支援は存在しません。
大切なのは、お子さまをよく観察し、
- どんな時に不安になるのか
- どんな環境なら安心できるのか
- どんな支援が理解しやすいのか
を丁寧に把握することです。

そして、その子に合った方法を見つけながら支援を積み重ねていくことが重要です。
ぽぷらの樹東住吉でも、お子さま一人ひとりの特性や成長段階を大切にしながら支援を行っています。
「できないこと」に目を向けるのではなく、「できること」や「得意なこと」を活かしながら成功体験を積み重ね、自信につなげていくことを大切にしています。
お子さまが安心して過ごせる環境の中で、自分らしく成長していけるよう、これからも一人ひとりに寄り添った支援を続けてまいります。
次回は「家庭や支援現場でできる対応方法」についてご紹介します
今回は、強度行動障害の基本的な考え方や行動の背景についてご紹介しました。
強度行動障害は、決して本人のわがままや保護者様の育て方が原因ではありません。
まずは「なぜその行動が起きているのか」を理解することが支援の第一歩です。
次回は、強度行動障害のあるお子さまへの関わり方や、家庭や支援現場で実践できる対応方法について詳しくご紹介します。
お子さまの成長を一緒に支えていきませんか?
運動療育型児童デイぽぷらの樹東住吉では、お子さま一人ひとりの特性に合わせた支援を行っています。

強度行動障害や発達特性について不安やお悩みをお持ちの保護者様も、ぜひお気軽にご相談ください。

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