気持ちの切り替えが苦手な子どもに|タイマー・絵カード・予定表を使った「見える化」の工夫【第3弾】
「何回言っても動いてくれない…」そんなときは環境を変えてみませんか?
「もうゲームはおしまいだよ」
「そろそろ片付けようね」
「次はお風呂だよ」
最初は優しく伝えていたのに、なかなか動いてくれない。
2回、3回と同じことを言っているうちに、
「もう何回言ったら分かるの!」
と、つい声が大きくなってしまった。
そんな経験はありませんか?
第1弾では、子どもが気持ちを切り替えにくい背景には、「まだやりたい」という気持ちだけでなく、次に何をするのか分からない不安や、時間の感覚の分かりにくさなど、さまざまな理由が考えられることをご紹介しました。
第2弾では、
「少し前から予告する」
「次にすることを伝える」
「まだやりたい気持ちを受け止める」
といった、切り替えを支える声かけについてお伝えしました。
では、声をかけてもなかなか切り替えられないときは、どうすればよいのでしょうか。
そこで第3弾で注目したいのが、「見える化」です。
タイマーや時計、絵カード、写真、予定表などを使って、「いつ終わるのか」「次に何をするのか」を目で見て分かりやすくします。
大切なのは、たくさん注意することではなく、お子さま自身が「次はこうするんだ」と理解しやすい環境をつくることです。
今回は、ご家庭でも取り入れやすい「見える化」の工夫をご紹介します。
なぜ「見える化」が切り替えの助けになるの?
大人は、
「あと10分」
「もうすぐお風呂」
「これが終わったら出かけるよ」
と言われると、ある程度その後の流れを頭の中でイメージできます。
しかし、お子さまによっては、言葉だけでは時間や予定をイメージしにくいことがあります。
例えば、
「もうすぐ終わりだよ」
と言われても、
「もうすぐって、いつ?」
と感じているかもしれません。
「あとでお風呂に入るよ」と言われても、
「あとでって、何をした後?」
と分かりにくいこともあります。
そこで役立つのが、目で確認できる手がかりです。
言葉は聞いた後に消えてしまいますが、絵や写真、予定表などは必要なときにもう一度確認できます。
「お母さん・お父さんが終わりと言ったから終わる」だけではなく、
「タイマーが鳴ったから終わり」
「予定表を見ると、ゲームの次はお風呂」
と、子ども自身が確認できる形にすることがポイントです。

① タイマーで「終わり」を分かりやすくする
ゲームや動画、公園遊びなどを終える場面では、タイマーを活用する方法があります。
例えば、
「あと10分でゲームはおしまいだよ」
と伝えてタイマーをセットします。
さらに、
「あと5分だよ」
「あと1分だよ」
と途中で知らせておくと、突然終了するより気持ちを準備しやすくなるお子さまもいます。
時間の長さを数字だけで理解することが難しい場合は、残り時間が色や目盛りなどで見えるタイプのタイマーを使う方法もあります。
ただし、タイマーを使えば必ずすぐに切り替えられるわけではありません。
最初はタイマーが鳴っても、
「まだやる!」
となることもあります。
そんなときも、
「タイマー鳴ったでしょ!」
と責めるのではなく、
「終わりの時間になったね。まだやりたかったね」
と気持ちを受け止めながら、少しずつ「タイマーが鳴ったら一区切り」という経験を重ねていきましょう。

② 「あと○回」で終わりを具体的にする
時間よりも回数のほうが分かりやすいお子さまもいます。
公園なら、
「あと3回滑ったら帰ろう」
ボール遊びなら、
「あと5回投げたらおしまい」
絵本なら、
「あと1冊読んだら寝よう」
動画なら、
「この1本が終わったらおしまい」
というように伝えます。
「あと少し」「もうすぐ」といった曖昧な言葉ではなく、終わりを具体的にすることがポイントです。
特に幼いお子さまの場合、5分・10分といった時間よりも、「あと2回」のほうが理解しやすいことがあります。
ただし、最初に「あと3回」と決めたのに、泣いたから5回、さらに泣いたから10回……と毎回変更すると、終わりが分かりにくくなる場合があります。
できる範囲で、決めた終わりを分かりやすく保つことも意識してみましょう。

③ 絵カードや写真で「次にすること」を見せる
言葉で何度も、
「着替えて」
「歯を磨いて」
「ランドセルを持って」
と伝えることが多い場合は、絵カードや写真を使う方法もあります。
例えば朝なら、
起きる → 顔を洗う → 着替える → 朝ごはん → 歯磨き → 出発
夜なら、
夕食 → お風呂 → パジャマ → 歯磨き → 絵本 → 寝る
という流れを、イラストや写真で並べます。
終わったものを裏返したり、チェックをつけたり、「できた箱」に移したりする方法もあります。
お子さま自身が、
「今はここ」
「次はこれ」
と確認できるようになることが目的です。
絵カードというと特別な教材を準備しなければならないように感じるかもしれませんが、最初から立派なものを作る必要はありません。
紙に簡単な絵を描く、お子さまが実際に使っている歯ブラシやランドセルの写真を使うなど、ご家庭で分かりやすい方法から始めてみましょう。

④ 一日の予定を見えるようにする
予定変更が苦手だったり、「次は何をするの?」と何度も確認したりするお子さまには、一日の予定を見えるようにする方法もあります。
例えば休日なら、
朝ごはん
↓
着替え
↓
公園
↓
昼ごはん
↓
自由時間
↓
お風呂
↓
夕食
と、大まかな予定を示します。
すべてを分刻みで管理する必要はありません。
目的は、お子さまを予定通りに動かすことではなく、これから起こることを予測しやすくすることです。
予定が変わった場合も、言葉だけで、
「今日は公園なし!」
と伝えるのではなく、予定表の公園カードを外して、
「今日は雨だから、公園が買い物に変わるよ」
と見せることで、変更を理解しやすくなる場合があります。
「予定は変わることもある。でも、次に何をするかは分かる」という経験を少しずつ積んでいくことも大切です。

⑤ 「先に○○、そのあと△△」を見える形にする
苦手な活動へ切り替えるときには、
「先にすること」と「その後にすること」
を分かりやすくする方法があります。
例えば、
先に:宿題
そのあと:ゲーム
先に:お風呂
そのあと:絵本
先に:片付け
そのあと:好きな遊び
という形です。
言葉だけでなく、写真や絵を2枚並べるだけでも構いません。
「今、何をしなければならないのか」だけではなく、「その後に何があるのか」まで見えることで、次の行動へ移りやすくなるお子さまもいます。
ただし、何でもご褒美にする必要はありません。
目的は、「これをやったら物をもらえる」という関係をつくることではなく、活動の順番や見通しを分かりやすくすることです。

⑥ お子さまと一緒に予定を決めてみる
年齢や理解に合わせて、お子さま自身に予定づくりへ参加してもらう方法もあります。
例えば、
「宿題とお風呂、どっちを先にする?」
「ゲームは何時までにする?」
「寝る前は絵本と静かな遊び、どっちにする?」
など、選べる範囲で一緒に決めます。
自分で決めたことが、必ず守れるとは限りません。
それでも、「全部大人に決められた」のではなく、自分も予定を決めることに参加した経験は大切です。
選択肢は多くしすぎず、最初は2つ程度にすると選びやすいでしょう。
もちろん、「学校へ行く・行かない」「帰る・帰らない」のように、実際には選べないことを選択肢として提示する必要はありません。
大人が決めることと、お子さまが選べることを分けることがポイントです。

「見える化」は、その子に合っていることが一番大切です
タイマー
絵カード
写真
予定表
チェック表
さまざまな方法がありますが、全部を使う必要はありません。
大切なのは、道具を使うことそのものではなく、その子にとって分かりやすい方法になっているかです。
例えば、タイマーを見ると余計に焦ってしまうお子さまもいるかもしれません。
絵より実際の写真のほうが分かりやすいお子さまもいれば、写真よりシンプルなイラストのほうが理解しやすい場合もあります。
予定を細かく示すより、「今」と「次」だけ分かるほうが動きやすいお子さまもいます。
そのため、
「タイマーを使ったのにできなかった」
と考えるのではなく、
「この方法は、この子には分かりにくかったのかもしれない」
と考えてみましょう。
一度で正解を見つける必要はありません。
試して、様子を見て、少し変えてみる。
その繰り返しの中で、お子さまに合った方法を探していくことが大切です。

「見える化」の目的は、大人の指示を減らしていくこと
見える化というと、「子どもを予定通りに動かすための方法」のように感じるかもしれません。
しかし、本当に目指したいのはそこだけではありません。
例えば、毎朝、
「着替えて!」
「歯を磨いて!」
「ランドセル持った?」
「早く靴を履いて!」
と、大人がすべて指示していたとします。
予定表を見ながら、お子さま自身が、
「次は歯磨きだ」
「その次はランドセル」
と確認できるようになれば、大人が伝える回数を少し減らせるかもしれません。
ゲームの終了も、
「お母さんに怒られたから終わる」
ではなく、
「タイマーが鳴ったから終わりの時間だ」
と理解できるようになるかもしれません。
もちろん、すぐに一人でできるようになる必要はありません。
最初は一緒にタイマーを見る。
一緒に予定表を確認する。
「次は何だったかな?」と声をかける。
そこから少しずつ、自分で確認する経験へつなげていきます。
大人に動かしてもらう状態から、自分で「次」を理解して行動する経験へ。
そのための手助けとして、「見える化」を活用していきましょう。

「切り替えられた」という小さな経験を積み重ねていきましょう
今回の3部作では、子どもの「気持ちの切り替え」について考えてきました。
第1弾では、切り替えが難しい背景。
第2弾では、切り替えを支える声かけ。
そして第3弾では、タイマーや絵カード、予定表などを使った環境づくりをご紹介しました。
大切なのは、
「早く切り替えられる子にすること」だけを目標にしないことです。
「まだ遊びたいけれど、タイマーが鳴ったから終われた」
「予定が変わって嫌だったけれど、次の予定を確認できた」
「昨日は大泣きしたけれど、今日は『まだやりたい』と言葉で伝えられた」
そんな一つひとつの経験も、お子さまにとって大切な一歩です。
また、家庭で毎回同じように対応できなくても構いません。
忙しい朝に予定表を確認する余裕がない日もあれば、予告する前に時間になってしまう日もあるでしょう。
保護者の方も「完璧にやらなければ」と考えすぎず、
「この子は何が見えると分かりやすいかな?」
「どうしたら次の行動へ移りやすいかな?」
という視点から、お子さまに合った方法を少しずつ探してみてください。

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